生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2007年度 中間評価結果

エイコサノイド生産スーパーゼニゴケ植物工場システムの開発

技術コーディネーター

大山 莞爾(石川県立大学)

参画機関

石川県立大学、株式会社総合園芸、北陸電力株式会社、株式会社アクトリー、小太郎漢方製薬株式会社

【研究内容】

本研究では、医薬品の原料となるエイコサノイドを遺伝子組み換えゼニゴケを用いて、安価かつ安定的に供給するための植物工場システムを開発することを目的としている。生育に多量の光や空間を必要としないゼニゴケを用いること、かつ、植物工場内に抽出・精製・残渣処理装置を設置することで、栽培効率化及び低コスト化が可能となる。

【中間評価結果概要】

スーパーゼニゴケの作出では、エイコサノイド類生成関連酵素の遺伝子をクローニングしてゼニゴケに形質転換し発現させて、エイコサノイド類が豊富に生成するスーパーゼニゴケの作出を目指している。しかし、目的遺伝子のクローニングはほぼ終了し、ゼニゴケや動物等由来の遺伝子19種をクローニングし、その約半数の9種の形質転換体が得られたが、エイコサノイド類の過剰生産には成功していない。後半では、既に得られている律速酵素の過剰発現でアラキドン酸・エイコサペンタエン酸含量2倍を超える形質転換体を用いて、スーパーゼニゴケを作出することを目指すべきであり、研究を担当する石川県立大学の成果が研究全体を成功させるのに必須である。
一方、閉鎖型植物工場システムの構築では、ゼニゴケに適した栽培マット・散水方法を確立し、横及び縦型の多段栽培棚による実証栽培を行い、ゼニゴケの生育・脂肪酸合成に適した光照射法を開発し、ゼニゴケを効率よく栽培するという前半の目標を達したと思われる。また、ゼニゴケからの目的の長鎖多価不飽和脂肪酸を効率よく抽出する方法を、前処理、搾汁及び残渣処理の工程ごとに確立し試作機を製作した。さらに、抽出液中の成分分析の簡易・効率的な方法も確立し、抽出法・成分分析法に関する開発も前半の目標をほぼ達した。後半では、得られたエイコサノイドの同定・定量法を確立すべきである。
今後は、今年度までの成果をもとに、安全性を考慮しながら研究成果の公表にも努め、スーパーゼニゴケによるエイコサノイド生産植物工場の開発を達成することを期待する。