生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2007年度 中間評価結果

カイコバキュロウイルスによる犬フィラリア診断薬の開発及び感染防御抗体の解析

技術コーディネーター

今西 重雄((独)農業生物資源研究所)

参画機関

(独)農業生物資源研究所、日本大学、法人新潟大学、日本獣医生命科学大学、株式会社バキュロテクノロジーズ、株式会社シマ研究所細胞科学センター

【研究内容】

イヌの寄生虫病である犬フィラリア症の感染早期の正確な診断法を確立するために、新たに開発したカイコ培養細胞とカイコバキュロウイルス発現系を用いて、フィラリア虫体表面タンパク質をカイコ細胞膜に発現させる。発現した膜タンパク質から精度が高いモノクローナル抗体を直接作製するとともに、反応性の高い高次構造タンパク質抗原に改変して大量生産し、検出キットの作製、有効な診断薬の開発とワクチン生産の可能性を検討する。

【中間評価結果概要】

犬フィラリア感染を検出する高感度で簡便、迅速な診断キットの作製を目標として、犬フィラリアの膜蛋白質のcDNAを組換えバキュロウイルスに組み込み、カイコ細胞で発現させ、発現細胞をマウスに接種して膜蛋白質に対する単クローン抗体を取り、この単クローン抗体で検体中の虫体を検出するイムノクロマトを作製する戦略である。このため、6機関が課題を分担しているが、コーディネーターが6つの研究機関の機能をよく融合・調整しており、共同研究体制が非常によく進められ、成果を上げている。
目標の達成は、適切な抗原の選択と、抗原と特異的に強く結合する単クローン抗体の作出にかかっており、不確定の要素があるが、開発プロジェクトとしての進行は順調である。犬フィラリアに関する新たな科学的知見を得る可能性もある。また、診断キット試作品が作成されるなど、当初よりも若干、早く計画が進行している。成果については、さらに積極的に公表することを期待する。
本研究の目的が達成されれば、犬の犬フィラリア症の診断精度が上がることは確実である。また、猫にも犬フィラリアの感染が認められるが、宿主-寄生体のバランスにより、これを検出・診断することが極めて難しいという実態があり、臨床的な問題となっている。本研究はこの問題をも解決するものであり、新規の「犬フィラリア症診断キット」は世界市場で流通すると考えられ、多大なる経済効果が期待できる。さらに、人の犬フィラリア感染に対する診断にも応用ができ、人獣共通感染症の制御という点でも意義が大きい。