生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2007年度 中間評価結果

BSE等プリオン病の発症前診断を可能とするバイオチップの開発

技術コーディネーター

軒原 清史(株式会社ハイペップ研究所)

参画機関

株式会社ハイペップ研究所、(独)農研機構動物衛生研究所、東京農業大学応用生物科学部

【研究内容】

BSEの発症前に、血液等で簡便、短時間、低コストでその感染を検査できる方法を開発する。ハイペップ研究所は、ペプチドとの相互作用でタンパク質構造を読み取るバイオチップ及び簡易検出装置を開発する。動物衛生研究所は、これらをBSEの原因となる異常プリオンタンパク質の検出に応用し、有用性を評価する。東京農大は天然物ライブラリーからタンパク質構造変換に関与するペプチドを単離し、BSEに関連するペプチドを探索する。

【中間評価結果概要】

プリオンタンパク質の検出は非常にハードルが高いテーマであるが、最終目標のプリオン病の発症前診断を可能とするバイオチップの開発に向けて、コンソーシアム全体として当初計画に基づき研究が進んでいると評価できる。
高いペプチド精製技術で2500種類以上のペプチドライブラリーを作製し、チップ基板の表面化学を最適化した。また糖タンパク質ライブラリー構築においても成果が得られている。プリオンタンパク質のオーバーラップペプチドを用いて、溶液系ではあるが、異常プリオンタンパク質の検出が可能であり、その種類に応じて検出パターンに差があることを見出したことは学術的に重要である。アレイ用基板および検出器の開発、改良も順調に進んでいる。BSE感染牛等のプリオン感染動物からの生体試料の採材は時間を要する仕事であるが、これも計画的に進められている。
しかし、現時点で、試作品を含め、BSE等のプリオン病の発症前診断を行うための異常プリオンタンパク質を検出可能なペプチドアレイチップの作製には至っていない。また、ペプチドアレイの検出感度がいまだ明確でなく、その高感度化を図る方策について明確なビジョンが示されていないのは問題である。至急診断チップの試作品を提出し、その有用性を検討するための研究に取りかかるべきである。今後は、一部計画の見直しを図って、診断方法の構築を世界に先駆けて提案することを期待したい。具体的には、ハイペップ研究所が有する2500種以上のデザインペプチドライブラリーは独自性の高い資材であるので、これを血液、尿などの生体試料中のプリオン病診断補助マーカーとなる分子や血液生化学性状のプロファイル等の探索やプリオン蛋白の構造変換機構の解析に有効に活用することが望ましい。