生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

異分野融合研究支援事業

2007年度 中間評価結果

天蚕由来のヤママリンをリード化合物とした細胞増殖制御剤の開発

技術コーディネーター

鈴木 幸一(岩手大学農学部)

参画機関

岩手大学、三重大学、北海道大学、(独)農業生物資源研究所、積水メディカル株式会社

【研究内容】

日本原産の天蚕より同定されたペンタペプチド(ヤママリン)ならびにそのパルミチン酸誘導体(強力ヤママリン)の持つ細胞増殖抑制効果あるいは昆虫休眠化能に関しその機能発現機序を探り、それらペプチド類を活かした細胞増殖制御剤ならびに難防除害虫成長抑制剤の開発を5機関の連携により目指す。
分担課題:1.ヤママリン誘導体による細胞増殖制御と昆虫休眠化の機構解明、2.ヤママリンの各種誘導体の分子設計と合成、3.ヤママリン誘導体の立体構造解析と相互作用解析による高機能物質のデザイン、4.難防除害虫の個体および細胞を用いたヤママリン誘導体の成長制御効果評価システムの確立、5.ヤママリンに対する抗体作出と細胞増殖制御剤の開発

【中間評価結果概要】

概ね当初の目標どおり研究を展開、遂行している。技術コーディネーターのもと相互の連携をさらに強化し一層の奮起をして後半に研究を盛り上げることができれば、当初目標の研究成果をあげることができるものと期待できる。そのためには、 ヤママリンの生理活性発現機序の精査が必要であり、より洗練された実験方法と取得データの鋭い切り込み・解釈が必要である。すなわち、本コンソーシアムにおける研究の方向付けにおいて最も重要かつ出発点となるヤママリンの生理活性発現機序に関する提唱が、現時点では多くが推測あるいは期待の域を出ず科学的な観点から十分説明されているとは言い難いので、ヤママリンのどの構造部分が休眠活性を担うリード構造であるのか、ペプチドの作用点はシグナル伝達系受容体なのか酵素のようなタンパク質の機能阻害なのかなど、研究を進めるうえで必要不可欠な作業仮説を明瞭に絞りこみ、必要な裏付け実験を早急に行って目的達成のための合理的な方向付けを行うべきである。
また、生理活性や構造研究に用いるヤママリン誘導体の選択などを含め個々のグループ間での連携を強め、積極的なミーティングのもと、化学合成グループと生理活性測定グループが一緒になって活性の強さと化学構造との関係を解析し次に合成する化合物の化学構造をデザインする、といった薬物設計研究での方法を導入することが必要である。
なお、特許出願に関しては順調に行われているが、原著論文が少ないので出願成果をタイミングが遅れることなく論文化し公表してほしい。