年度 2020 ステージ 開発研究 分野 農業-病害虫 適応地域 全国 キーワード 青枯病、ショウガ科作物、発生生態、土壌消毒、種イモ消毒 |
課題番号 | 29014C |
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研究グループ | 農研機構農業環境変動研究センター、九州大学、高知県農業技術センター、沖縄県農業研究センター、長崎県農林技術開発センター、高知県中央西農業振興センター高知農業改良普及所、沖縄県北部農林水産振興センター農業改良普及課 |
研究総括者 | 農研機構農業環境変動研究センター 堀田 光生 |
研究タイプ | 現場ニーズ対応型 Aタイプ |
研究期間 | 平成29年~令和元年 (3年間) |
PDF版 | ショウガ科作物産地を維持するための青枯病対策技術の開発 (PDF:819.4 KB) |
1 研究の目的・終了時の達成目標
国内のショウガ科作物 (ショウガ、ウコン等) 栽培地域では、近年、青枯病が多発し大きな問題となっている。本病の防除試験はこれまで全く行われておらず、また、有効な農薬も報告されていない。本病の発生面積と被害は年々増加しており、このままでは産地の維持が困難になると懸念されている。そこで、本研究では、ショウガ科作物青枯病の発生生態を解明し、診断・防除技術を開発し、本病の総合防除体系を構築するとともに、生産現場へのこれら開発技術の普及を目標とする。
2 研究の主要な成果
- ショウガ科作物青枯病菌の主要な伝染源が土壌と種イモであることを解明し、汚染圃場の土壌消毒対策の徹底、汚染圃場由来の種イモは原則使わず、使用の場合は消毒処理を徹底、が重要であることを明らかにした。
- 同青枯病菌の特異的検出・診断技術を開発し、高精度かつ高感度な同定・診断が可能になるとともに、診断に要する時間を短縮した。
- 土壌中および種イモに感染した青枯病菌に対して効果的な各種防除技術 (低濃度エタノール土壌還元消毒、石灰窒素を用いた太陽熱土壌消毒、くん蒸剤処理、種イモ温湯消毒等) を開発した。
- 圃場の汚染程度に応じた総合防除体系を確立して、診断・防除マニュアルを作成することで、開発した診断・防除技術の普及に向けた準備を整えた。
公表した主な特許・品種・論文
- Horita, M. et al. Specific detection and quantification of Ralstonia pseudosolanacearum race 4 strains from Zingiberaceae plant cultivation soil by MPN-PCR. J. Gen. Plant Pathol. (2020) 86:393-400. https://doi.org/10.1007/s10327-020-00939-x
3 開発した技術・成果の実用化・普及の実績及び今後の展開
- 本研究で開発した「低濃度エタノール土壌還元消毒法」は、土壌消毒対策として安定した効果が得られたことから、今後、普及面積の拡大を目指す。
- 同様に「石灰窒素を用いた太陽熱土壌消毒法」は、上記還元消毒と同様な効果が圃場試験で確認され、また費用も還元消毒に比べて安いことから、今後実証データを積み重ねて、技術普及を目指す。
- 「クロルピクリン錠剤を用いた土壌消毒法」は、農薬の適用拡大後、傾斜地等上記防除法の利用が難しい地域で栽培され、防除手段が皆無なウコンでの利用を見込む。
- 「種イモ温湯消毒法」は、汚染リスクを減らし、使用可能な健全種イモを安定的に供給する手段としての普及を見込む。
【今後の開発・普及目標】
- 2年後 (2021年度) は、高知県、沖縄県等の青枯病汚染地域での技術導入、圃場実証を進める。
- 5年後 (2024年度) は、高知県、沖縄県等の生産現場での技術普及・定着を進める。
- 最終的には、全国のショウガ科作物生産現場での技術普及を目指す。
4 開発した技術・成果が普及することによる波及効果及び国民生活への貢献
- ショウガ科作物青枯病の発生地域における発病面積が現状より大幅に減少するとともに、発病圃場における減収率が低下し、その結果、ショウガ科作物の出荷量が約900t、販売額が約6.2億円増加すると期待できる。
- 出荷量の増加にともない、本作物栽培地域の収益が増加し、農村や地域経済の維持発展に貢献できる。また、本病害の抑止により、高品質かつ機能性成分が多いショウガ、ウコンを安定供給させることで、国民の食 生活や健康の維持にも貢献できる。
問い合わせ先 : 農研機構農業環境変動研究センター堀田 TEL 029-838-8267