生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2010年度 継続審査結果

次世代DNAシークエンサーを活用したゲノム育種基盤技術の開発

研究代表者氏名及び所属

松村 英生(信州大学ヒト環境科学研究支援センター)

継続審査結果概要

本研究は、次世代シークエンサーを用いた多検体の遺伝子発現と多型を解析する技術の開発を目標とし、この有効性を熱帯作物(パパイヤ、ニガウリ)の生産で問題となる「花の性、花型」の制御遺伝子の同定と機能解析、およびDNAマーカーの作出によって証明しようとするもので、生物系特定産業に貢献する課題である。

研究担当者自身が開発したSuperSAGE法を、次世代シークエンサーを利用して多試料を網羅的に遺伝子発現解析できるハイスループットSuperSAGE法として進化させた。さらに、SuperSAGE法をゲノムに適用したゲノムタグプロファイリング法を開発して複数品種間の大規模なゲノム多型を解析する手法を確立したことも評価できる。

パパイヤ及びニガウリへのこれらの技術の適用に関しては、合計1800万のSuperSAGEタグを収集し、パパイヤでは性特異的な性染色体と相同な配列を持つ67個のタグを見出した。ニガウリのタグ同定のための雌性・混性の分離集団についてもF2集団まで順調に育成した。課題全体として、研究開始時に設定した目標については3年間でおおむね達成済みであり、優れた成果が得られる見込みである。
提出された研究計画にはかなり意欲的な部分が含まれているが、新規計画(パパイヤのゲノム配列、形質転換、ニガウリ短紡錘形の育種)については、あと2年間という期間を考慮して、ある程度確実性のあるもので、適切な技術支援が期待できるものに絞るべきである。また、ハイスループットSuperSAGE法やゲノムタグファイリング法の汎用化に関するより具体的な課題を設定することが重要である。

このような状況と提案内容の検討から、研究計画のうち、機能推定した候補タグの機能決定、すなわち性決定のメカニズム解明に特化し、ニガウリ雌性型形質の育種用DNAマーカーを作出するとともにパパイヤの性決定に関係する遺伝子を同定するための取組みに限定して研究計画を重点化することを条件として研究を継続すべきと判断する。