生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2010年度 継続審査結果

二重変異体を用いた新規構造澱粉米の開発

研究代表者氏名及び所属

藤田 直子(秋田県立大学生物資源科学部)

継続審査結果概要

本課題においては、他の研究グループが有していない材料を用いて、イネの澱粉生合成に関わる酵素アイソザイム遺伝子の二重変異体を作出することにより、澱粉生合成メカニズムの解明、二重変異体が生産する新規な構造を有する澱粉の利用・実用化を図ることを目的としている。

これまでに、17系統の二重変異体を作出し、7系統については澱粉を大量に精製して澱粉構造・物性等の分析が行われた。ユニークな構造や成分をもつ澱粉の大量精製法を確立するとともに、2つの系統から調製された米粉を用いた食品利用が試みられ、利用・実用化への可能性も示された。研究成果は、学術的にも産業的にも当初の研究終了時の達成目標を大きく上回るものであり、二重変異体の作成数で当初目標をクリアしているだけでなく、学術的にもインパクトのある研究発表をしており、高く評価できる。
延長研究計画では、二重変異体の作出、二重変異体の分析およびアイソザイムの機能解明並びに二重変異体の適性評価を進めることを計画している。

良食味米品種および多収米品種への二重変異の導入は、二重変異による澱粉形質が保持されるかどうか大変興味深く、さらに実用化という観点からも是非試みるべきである。
澱粉生合成関連酵素アイソザイムの機能解明およびそれらが澱粉構造・物性に与える影響のカタログ化は、各アイソザイムの役割を明らかにするものと、また多数の酵素アイソザイムが関与する澱粉生合成制御系を解明する試みは澱粉科学および澱粉産業の発展に大きく貢献するものと期待される。ただし、二重変異体の適性評価のうち日本酒醸造特性の評価については、糖質に関しては余り風味には影響していないといわれていることから、大きな成果は期待できない。

以上のことより、本課題は提案された延長研究計画のうち日本酒醸造適性の検討を研究計画から除外し、研究計画を重点化して実施するという条件付きで継続すべきと判断する。