生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2010年度 終了時評価結果

温帯果樹の休眠制御機構の分子基盤解明

研究代表者氏名及び所属

山根 久代(京都大学大学院農学研究科)

総合評価結果

当初計画どおり推進

評価結果概要

ウメやモモなど温帯果樹の休眠現象の解明と制御は、種々作型の生産安定化と気候変動に適応可能な品種育成を図る上で重要な課題である。休眠現象の解明は生態学・生化学的アプローチを中心に行われてきたが、最新の解析手法を駆使して休眠現象の制御遺伝子解析と休眠性に係る分子マーカー開発を進め、一定の成果を挙げたことは評価に値する。

ウメおよびモモの休眠性を制御する遺伝子の同定では、DAM6(DORMANCY ASSOCIATED MADS)遺伝子の単離と発現解析により、DAM6遺伝子が休眠を制御する成長抑制因子であることをほぼ確実に証明するとともに、DAM遺伝子群の関与と発現部位等を明らかにした。さらに大規模EST解析等を行い、DAM遺伝子発現の上流制御因子および下流ターゲット遺伝子を単離し、一連の休眠現象の分子制御モデルの提唱に至ったことは、果樹の休眠現象の機構の把握に前進をもたらしたものと評価できる。

休眠性改変個体の解析と休眠関連分子マーカーの開発では、ウメPmDAM遺伝子等を操作し、非休眠誘導条件での休眠導入を確認する一方、ウメFT遺伝子過剰発現体で休眠覚醒の前進等を認め、同遺伝子の休眠との関係を示せたが、信頼性の高いマーカーの確立には至らなかった。3年間という限られた期間の中で最大限の努力をしており、今後、ウメを用いた休眠深度分子マーカー開発等の継続的な研究と作出したリンゴ形質転換体におけるDAM遺伝子機能解析の進展を期待する。