生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2010年度 終了時評価結果

ヘアリーベッチ導入大豆栽培の多収機構解明と栽培技術の確立

研究代表者氏名及び所属

佐藤 孝(秋田県立大学生物資源科学部)

総合評価結果

当初計画どおり推進

評価結果概要

水田の転作作物として重要性を増しているダイズの大幅増収を担う実用性を前面に出した研究課題であり、社会的貢献という観点からほぼ当初の目標を達成した。

ヘアリーベッチ栽植による後作ダイズの増収効果については、多くの研究者がヘアリーベッチが固定した窒素による土壌窒素肥沃度向上による影響と推察していた。しかし、本研究から、ダイズのヘアリーベッチ由来の窒素吸収率は10%未満と低く、緑肥としての効果はそれほど大きくないこと、灰色低地土では下層土改善による根系拡大と根圏活性の向上が主な要因であることを明らかにするなど、ダイズの安定多収化を目指した土壌肥培管理において大きな示唆を与える結果を得た。ただ、他の土壌型でも同じ要因が関与しているか否かは今後の検討課題である。

優良根粒菌Y629株が低温でも高い窒素固定活性を維持する要因は、当初に予測した「窒素固定酵素(ニトロゲナーゼ)の構造の違い」に由来するものではなく、「窒素固定酵素群が安定的に発現(低温でも遺伝子が発現)することによる」との発見は興味深い。また、Y629株が"還元条件の土壌でも増殖できる"との特徴を生かした新規根粒菌接種技術(水田流し込み接種法と接種資材)の開発・商品化や接種後に長期保存が可能な接種資材の開発とそれを用いた接種法の開発、さらに土壌中ダイズ黒根腐病菌の迅速検出法の開発等も行われ、社会的貢献、生物系特定産業への寄与の観点から評価できる。