研究代表者(所属機関)
大坪 憲弘(独立行政法人農研機構花き研究所)
研究参画機関
独立行政法人農研機構花き研究所
独立行政法人産業技術総合研究所
筑波大学
財団法人岩手生物工学研究センター
北興化学工業株式会社
サントリーホールディングス株式会社
総合評価
優れている
講評
本研究は、植物独自の転写因子機能抑制技法であるCRES-T法を基盤に、花色と花形に特化した形質改変技術の改良および新規で優位性の高い不稔化技術の開発を行い、花粉の形成を最小限に抑えた全く新しい形質をもつ商品性の高い花卉の作出を目的として実施された。
生殖器官を花弁に改変し50枚以上の花弁をもつ八重咲き・不稔化シクラメンの創出、collective transformation法の利用可能性の実証、アサガオ・リンドウ・バラでのCRES-T法の実証、改良CRES-T法の開発など、所期の目的を全般的に達成した。また、対象が花卉であり、実用化を目指した研究であるので、IFの高い国際誌に載るような論文発表は少ないが、3年間で23編の原著論文と4件の特許出願(1件のPCT)は高く評価できる。
- collective transformation法の利用可能性の実証などCRES-T法の技術的改良を実証したことは、今後の花卉育種への遺伝子組換え技術の大きな可能性を実証的に示唆するもので、今後ますますその価値が認知されるのではないかと期待される。
- 50枚以上の花弁をもつシクラメン創出の実現(北興化学)は、本研究の大きな成果である。雌ずいと雄ずいが花弁に完全改変したため、花粉飛散が皆無である。
- リンドウ、バラなど商品価値の高い花卉において、CRES-T法による改変が可能であることが実証的にある程度示されたことは、今後の遺伝子組換えによる花卉育種の大きな可能性を示唆する重要な成果である。
- 改良CRES-Tベクターの開発の実績
- 八重咲きアサガオを実現する過程での遺伝子発現制御に関する生理学的制御の知見は、今後、本法を適用した形質転換体の遺伝子発現制御の指針となるはずである。
- 上記の成果はいずれも、研究代表者のリーダーシップ、研究代表者を中核とした参画機関分担者のチームワークの賜物である。
以上のような多数の特筆すべき成果が得られたことを高く評価する。また、花卉作物の様々な形質に関する制御技術をCRES-T法を基盤として実用的なレベルの成果に結晶させた点は、全体の費用対効果として十分高いものと評価できる。