研究代表者(所属機関)
磯野 邦夫(東北大学、平成20~21年度)
駒井 三千夫(東北大学、平成22年度)
研究参画機関
東北大学
株式会社ペプタイドドア
総合評価
やや不十分
講評
本研究は組換え体ショウジョウバエを用いた味覚評価システムの構築を目標としたが、研究の進捗は十分と言えるものではなかった。
学術的には、味リガンドを解析するため、ショウジョバエの味ニューロン及び複眼視細胞にヒトの4種の苦味受容体並びに甘味及びうま味受容体を機能発現させたところが最大の業績である。
また、味ニューロンに発現したヒト苦味受容体が活性化され、神経応答として出力されるところまで確認している。技術の確立までには詳細に詰める課題が残っているが、大枠での仕組みの目途はついた。
作製された組換え体や蛋白発現の評価等は研究技術の高さを示しているが、目標とした新たな技術を開発するという観点からは、初期的な段階と言えるだろう。
生物系産業創出については、未だ十分な基礎データが蓄積されておらず、実用化に至るまでには解決すべき多くの課題がある。
現状の技術シーズ水準では、安定的なベンチャーにはなり得ないし、技術シーズの確立、食品系での人間での味覚試験結果との相関関係を証明する必要がある。費用対効果については、当初の目標まで到達しておらず、投入した資金に見合う効果があったとは言い難い。
ただし、ヒト味覚受容体をショウジョウバエ味細胞に発現させ、ヒトと同じ味覚傾向を持つハエを作製し、ヒトによる官能試験の代替システムを作製するというアイデアは卓越したもので、実際に組換え体を作製した技術や研究能力は評価される。
これらが実際に産業において実用化されるかどうかは予断を許さないが、実用化の第一歩は踏み出したものと考えられ、今後の進捗も加速することが予想される。