研究代表者氏名及び所属
佐藤 充(農業生物資源研究所)
総合評価結果
優れている
評価結果概要
本研究は、カイコが多量に生産する絹タンパク質に着目し、より付加価値の高い抗体分子との融合タンパク質の創成を目指したものである。抗体の抗原特異的結合活性をシルクに賦与し、その融合シルクタンパク質の加工技術と組み合わせることにより、新素材「アフィニティー・シルク」を創出することを本研究の目標としている。結果として、scFv(一本鎖抗体)とフィブロインの融合タンパク質を生産し、それをパウダーやフィルムなどに加工するというオリジナリティーの高い技術の開発と抗体活性保持の実証により、目標が達成された。これらは、組換えカイコによる有用タンパク質生産の実用化への期待が高まる中で、有意義かつタイムリーな優れた研究成果と評価される。
また、実際に検査薬として有望な抗体が得られているか、という観点で評価すると、組換えWASP-scFv(抗WASP一本鎖抗体)では、抗体価を保持したシルクフィルムを創成することに成功している。したがって、scFv以外のさまざまな機能性タンパク質との融合フィブロインを用いて、全く既存の製品のない新素材を創出できる可能性もあるので、本研究で開発された技術的シーズは、将来、組換えカイコによる有用タンパク質生産の振興と発展に貢献する事が期待される。できるだけ早く、国際的な特許出願を行い、バイオテクノロジーの国際的一流誌への掲載を目指し、プライオリティ付けした知的財産化を推進すべきであろう。
以上の様に、当初の目的である「アフィニティーシルク」の作出に成功し、その応用可能な方法について検討できたことは、評価できる優れた研究内容である。