生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2011年度 終了時評価結果

シロアリの卵運搬本能を利用した疑似卵型駆除剤の実用化

研究代表者氏名及び所属

松浦 健二(国立大学法人岡山大学)

総合評価結果

当初目標を達成

評価結果概要

現在のシロアリ防除の大部分は液剤の駆除液を使用しているが、本研究の疑似卵型駆除剤が実用化されると、擬似卵に含ませた殺虫剤をシロアリ自らに巣の中枢に運搬させて巣全体を壊滅させることが可能となり、環境汚染や薬剤過敏性反応などのこれまでの液剤の欠点が克服されることになる。また、使いやすいことから家庭用のシロアリ防除剤としての使用法も十分に考えられる。我が国では家庭用シロアリ防除剤の市場規模はさほど大きくないので、家庭でも手軽に使用でき、PCO分野まで取り込めるとすれば、数十億円程度まで市場も拡大の可能性が考えられる。しかも安全な商品に育成できれば生物系産業創生への寄与は大きい。

研究課題は非常に独創的なものであり、特に学術的な部分での業績については特筆すべきものがある。3年間で5編の外国誌での論文発表が行われており、卵認識物質については達成目標の運搬率100%を、殺虫成分を内包した被膜崩壊型ゼラチン製擬似卵製剤については運搬率と駆除率が高いことを確認し、シロアリの生態学及び社会性昆虫の発展に大きく貢献する成果をあげた。

知的財産については、2件の特許出願ではやや少ないが、目的としたシロアリ駆除剤が、当該技術に支えられて基本的な部分は開発できている。前述のとおり、本駆除剤については、液剤を散布する必要がないため、飛散や汚染の回避、化学物質過敏症への配慮等の留意が不要になる画期的なシロアリ駆除技術となる可能性を秘めている。

また、各研究機関間の連携は、良かったと判断される。費用対効果も、ほぼ妥当な結果である。

しかしながら、実用化、すなわち近い将来での生物系新産業創出という点から見ると、例えば、製剤として安全性や耐久性など3年間の研究期間で積み残された課題が若干残されているのも事実である。残るは野外実証と経済性の追求である。工業的に安価に製造する方法を現在、検討中であり、十分に実用に耐えるものができるのではないかと、新規なシロアリ駆除剤の誕生を大いに期待したい。