生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2011年度 終了時評価結果

「ひとめぼれ」突然変異集団とRILsを用いた連関解析実験系の確立と利用

研究代表者氏名及び所属

寺内良平(財団法人岩手生物工学研究センター)

総合評価結果

優れている

評価結果概要

イネ品種「ひとめぼれ」突然変異系統群12,000系統および「ひとめぼれ」を共通親とした大規模組換え近交系(RILs)3,127系統を材料として、次世代シーケンサーで全ゲノムを解読し、解析アルゴリズムを開発するとともに、多数の形質を評価することで迅速に多数の変異遺伝子領域とQTLの原因遺伝子領域の同定に結びつけた。特に、すでにアラビドプシス等で報告されていた分離系統のバルク解析法を斬新なアイデアで進化させた「MutMap」法の開発により、従来法に比べて短期間で、かつ高い精度で、多くの有用遺伝子領域の同定に成功した。さらに、同定した遺伝子発現形質のうち育種上重要な半矮性、耐冷性、いもち病抵抗性、アミロース含有率、耐塩性などの形質を「ひとめぼれ」に付与した中間母本系統の育成まで成し遂げた。

このように、研究と実験全体の目標設定、デザイン、さらに実行段階でのマネジメント、3機関の役割と効果的連携・協力が多くの成果に結びついたことは、研究代表者・研究分担者の力量とともに高く評価できる。主要な成果は、世界的高評価を得ているNature Biotechnology誌等での論文公表(原著論文数5報)が達成されており、今後も幾つかの論文化が期待できる。

「MutMap」法の公開により知的財産権の取得はないが、開発された育成系統を含む技術的成果は、今後、わが国のイネ育種のみならず世界の作物育種の発展への貢献が期待できる。とりわけ、東北地方の主力品種「ひとめぼれ」に絞った新たなゲノム育種基盤の構築は、東北地方のイネ育種と稲作を勇気づける実用性を秘めた貴重な成果でもある。

以上のように、得られた学術的および技術的成果は、3年の研究期間、成果のまとまり、費用対効果といった観点から申し分なく、総合的に高く評価できる。