生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2011年度 終了時評価結果

酸化ストレス耐性酵母の創製と革新的発酵生産システムの開発

研究代表者氏名及び所属

高木 博史(奈良先端科学技術大学院大学)

総合評価結果

当初目標を達成

評価結果概要

本研究では、酵母における酸化ストレス耐性機構の分子生物学的研究の成果を踏まえて、産業酵母の遺伝子工学的改変を実施し、酸化・乾燥・冷凍などのストレスに対して耐性度が向上した酵母の育種に成功している。一方、酸化ストレス耐性機構として、新たに一酸化窒素が関わる経路及び液胞プロトンポンプが関わる経路を見出したことは、ストレス耐性酵母育種技術の新展開を期待させる。また、バイオエタノール酵母の育種で得られた「不要なストレス応答」という概念も多様な産業酵母のストレス耐性株育種をデザインする上で、考慮すべき重要なポイントを提供したと言える。遺伝子改変酵母を直接利用するには困難を伴う現況下での実用化に向けては、社会的に許容される改変技術による同等酵母の育種が必要と思われる。そのためにも酸化ストレス耐性産業酵母の種々の性質を知る上で本研究成果は重要となる。

ただし、本株の構築は遺伝子を操作する方法で行っているが、セルフクローニングの認定を受けると、通常の食品微生物として扱えることになるが、現在の社会状況を鑑みると、現有の株を工業的(バイオエタノール以外)に利用することは難しいと判断される。たとえセルフ認定を得たとしても、食品領域での利用には企業サイドの抵抗が強い。非食品領域(バイオエタノール等)への活用を積極的に検討するか、本研究成果の知見に基づき、非組み換え手法による同等な性質を持つ菌株の構築に向かうべきと考えられる。