生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2011年度 終了時評価結果

健康寿命伸長のための腸内ポリアミン濃度コントロール食品の開発

研究代表者氏名及び所属

松本 光晴(協同乳業株式会社)

総合評価結果

優れている

評価結果概要

腸内細菌やポリアミン(PA)はヒトを含めた哺乳類に共通に存在する背景がある。

本研究は、腸管内へのPA供給をビフィズス菌LKM512により増加させることにより寿命[MM1] 伸長につなげる試みであり、細菌叢を化合物の供給源として捉える新しいコンセプトの実証を目指し、腸内細菌の協働による特定の化合物の生成や、腸内細菌による化合物の吸収・放出の調節機序を解明しようとした学術的にも非常に興味深いものである。研究開始前からの予備実験がきちんとなされており、仮説の証明からスタートし、3機関がそれぞれ有する基礎的な力量を背景にレベルの高い国際誌3報を含む5報の論文を発表した。コンセプトの可能性を示す上では説得力のある結果を得ており、学術的にも高く評価されると考える。

また、腸内細菌叢解析に有用なデータベースを始め、腸内細菌相互の連関による化合物産生等の評価を可能にする基礎技術を開発し、最終的に細菌叢を化合物の供給源とする食品コンセプトの構築にまでつなげた。さらに、ヒトを対象とした製品イメージ構築につなげる技術的検討も行い、ビフィズス菌LKM512とPA産生制御物質の組み合わせによる試作食品の設計、[MM2] 作製を行うことによって、ヒトにおける当該仮説の検証を可能にする手段を提供し得たことは高く評価できる。研究チームとして十分に連携しつつ研究が実施され、特許出願3件と商品試作まで進んだことは、PAの哺乳類健康長寿に関する直接的な成果と共に、近い将来の製剤開発を期待させる。今後、生物系特定産業の創出に重要な役割を果たすことが期待される優れた成果が得られたと言える。

学術的課題はまだ残されているが、実証が困難なテーマを詳細かつ広範囲に検討している点も評価に値すると考える。これまで、期待されていた、PAが関わる健康科学領域に於ける事業の創出を具体的に議論できる状況に結びつけた点を高く評価する。

 [MM1]伸長


 [MM2]作製