生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2012年度 終了時評価結果

ウイルスベクターを利用した原虫感染レセプター同定系の開発

研究代表者氏名及び所属

加藤 健太郎(東京大学大学院農学生命科学研究科)

総合評価結果

優れている

評価結果概要

本研究は、ウイルスベクターという新しいアプローチ法を利用することで宿主細胞における原虫のレセプター探索を行い、原虫の宿主細胞への吸着・侵入に必要なレセプターの同定法の確立ならびに原虫のリガンドとレセプターの結合を阻害することにより原虫感染症を制御できる抗原虫薬シーズの開発を目的とする。実施小課題は、(1)原虫糖鎖レセプターの機能解析を基にした糖鎖製剤シーズの開発、(2)原虫プロテインキナーゼ(PK)を標的とした原虫薬シーズの開発、であった。

(1)では、原虫感染レセプター同定系の開発に成功し、複数の糖鎖レセプターと宿主細胞蛋白質の同定を行うことができた。また、原虫感染レセプターの同定で得た知見を基に、糖鎖製剤シーズとして硫酸化多糖類に着目し、感染・増殖阻害効果を持つシーズ分子および原虫ワクチンの抗原候補分子を複数得ることができた。

(2)では、原虫のライフサイクルにおける原虫PKの役割を解析し、原虫PKは宿主細胞侵入等のライフステージやステージ移行を制御していることを明らかにした。また、原虫の薬剤耐性、休眠型への移行の分子メカニズムの一端を明らかにした。さらに、PK阻害薬を用いた原虫の感染阻害試験から抗原虫薬のシーズを複数得ることができた。

以上のように、当初目的の原虫感染レセプター同定系の開発に成功し、抗原虫薬のシーズを複数得ることができたことは高く評価できる。特に、ウイルスベクターを用いたシステムがリガンド・レセプター結合試験に有用であることを実証し、この相互作用を阻害する物質として糖鎖製剤の可能性を示したこと、および原虫増殖におけるPK阻害剤の有効性を示したことは、生物系特定産業に寄与し得る優れた成果といえる。