生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2012年度 終了時評価結果

プロバイオティクスを利用したミツバチ感染病制御技術の開発

研究代表者氏名及び所属

芳山 三喜雄((独)農研機構 畜産草地研究所)

総合評価結果

当初計画通り推進

評価結果概要

本研究課題は、ミツバチ関連微生物に着目し、免疫賦活化機能および蜂病菌増殖抑制効果をもつ有用微生物(プロバイオティクス)の単離・同定を行い、養蜂現場におけるプロバイオティクス飼料や微生物農薬としての有効性を実証することを目的とした。アメリカ腐蛆病および知見が乏しいヨーロッパ腐蛆病を対象とし、セイヨウミツバチに対してプロバイオティク効果のある菌をニホンミツバチの腸内細菌の中から探索した結果、混合投与するとヨーロッパ腐蛆病に効果のある乳酸菌群を得た。しかし免疫関連遺伝子発現にこの菌群の投与は影響しないことから、プロバイオティク効果かどうかは今後の課題として残された。アメリカ腐蛆病に対しては、高いプロバイオティク効果を持つ菌は得られなかったが、アメリカ腐蛆病菌に対して抗菌活性を示す菌から、既知の物質ではあるがバクテリオシンの1種であるthurincin Hを抗菌物質として同定した。この化合物は飼料中でも安定であり、アメリカ腐蛆病菌との同時投与によって幼虫の死亡率を低下させる効果があることが明らかとなった。このように、アメリカ腐蛆病菌に対する抗菌物質の発見という、当初のプロバイオティクスによる防除を目指した研究とは異なる展開となった。しかし、ヨーロッパ腐蛆病とアメリカ腐蛆病に対して、新たな防除技術へ発展する可能性のある一定の成果を得たことは評価できる。将来的な蜂病防除技術開発への展開に期待したい。