生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2012年度 終了時評価結果

篩部伴細胞におけるフロリゲン機能調節技術の開発

東京大学大学院理学系研究科研究代表者氏名及び所属

阿部 光知(東京大学大学院理学系研究科)

総合評価結果

優れている

評価結果概要

本課題は、新たに同定した花成制御因子FEが篩部伴細胞特異的な転写制御因子をコードしていること、ならびにフロリゲン(FTタンパク質)の輸送に関与している可能性が高いことを実証するために計画され、篩部伴細胞における標的因子の転写制御を介して、FEがフロリゲンの産生と茎頂への輸送の両過程を制御していることなど、篩部を介した全身的な情報ネットワークに関する画期的成果を得ることに成功しており、当初目標は達成できたと判断できる。本研究は、熱ショックプロモーターによる単葉誘導系を利用することによって、FEタンパク質がフロリゲンの葉から茎頂への輸送に関与していることを明らかにしたものであり、基礎科学としてきわめてインパクトの高い成果が得られている。従来、フロリゲンの機能制御に関する因子として、茎頂部でフロリゲンの受容体として働くFDが知られていたが、それ以外の情報はまったく得られていなかった。本研究におけるFEの機能解明およびfe-1変異体の詳細な解析は、フロリゲンを介した花成制御の分子機構の解明研究に新たな潮流を生み出す可能性がある。なお、篩部を介した超長距離情報ネットワークが分子レベルで議論されることは、この数年の成果によって可能になったものであり、本課題のような基礎研究の充実とそこから得られる成果の集積により、将来の生物系特定産業の発展に寄与することを期待したい。

以上のように、短期間で、植物の篩部輸送と花成誘導に関する重要な知見を獲得したことは高く評価できる。本研究で得られた成果は独創性、新規性およびインパクトのすべての面で科学的価値が高いことから、本成果に対する客観的な評価を広く認知させるため、出来るだけ早くトップジャーナルでの論文公表を期待する。