研究代表者氏名及び所属
岡本 雅子(帯広畜産大学)
総合評価結果
優れている
評価結果概要
本研究の目的は、食品のリスクに関する数値情報に着目し、消費者が求めている情報の実態を明らかにした上で、最終的に消費者の情報ニーズを満たす情報提供方法を開発することにある。
これまで医療リスクコミュニケーションで用いられていたニュメラシー(数値理解力)尺度・概念を食品のリスクコミュニケーションに初めて導入し、5つの達成目標を設定して研究を進めた手法は独創的であり評価される。1原発事故影響に関する情報を得る上での問題の把握と、2消費者に関するニュメラシーとリスク認知関係を定量的に視覚化した構造方程式モデルの構築は、目標が充分に達成された。3心理統計学的に妥当性・信頼性の確保された心理尺度の確立に関しては、海外で発表された最新の複数のニュメラシー尺度を導入し、計画を上回って目標が達成された。4各セグメントに最適な情報提示方法の確立と、5各情報提示方法の特徴を分かりやすく可視化したポジショニングマップの作成については、消費者セグメンテーションに有効な2つの尺度、理解度と満足度(主観評価)を指標に各種分析が行われ、目的を達成したと評価できる。ただし分析結果はかなり複雑であり、解釈をより普遍的なものにするためには、さらなる調査研究が必要であろう。研究の眼目は、“食品リスク情報提供法”に関する基盤研究にあるが、放射性物質で汚染された食品、あるいは食品一般、食品に残留する農薬等の安全性に関するリスクコミュニケーションにおいて、消費者に対するセグメント別リスク情報提供手法の具体的な提案がなされれば極めて有意義と思われる。短い研究期間であるにもかかわらず、着実かつ臨機応変に計画に沿った研究を実施し、目標を十分に達成する成果を挙げたことは高く評価される。