研究代表者氏名及び所属
石橋 純((独)農業生物資源研究所)
研究参画機関
(独)農業生物資源研究所
和歌山県工業技術センター
JITSUBO株式会社
総合評価結果
やや不十分
評価結果概要
本研究は、昆虫抗微生物タンパク質(ディフェンシン)改変ペプチドを絹・綿・ポリエステルの各繊維に固定化する技術の確立、作製した抗菌性素材プロトタイプの抗菌活性試験・安全性試験等の実施及び改変ペプチド合成の低コスト化を目的に実施された。
研究チームの連携は良く、各種ペプチドの合成と提供、加工剤の試作と評価など、円滑な推進が図られた。しかし、生物系産業創出への寄与が最も期待される「抗菌ペプチド融合シルク」開発の推進と成果は不十分である。前年度の評価でもこの点を指摘し、計画の遅れの挽回を期待しただけに残念である。一方、改変ペプチド導入アクリル系ポリマーを用いた繊維用加工剤と繊維プロトタイプの開発に成功した。これら材料は抗菌試験の結果、抗菌活性を確認でき、安全性に関してもSEK認証基準に適合しており、掲げた目標をいずれも達成できた。画期的な繊維加工技術であり、今後の展開を期待したい。抗菌ペプチドの合成では、リンカーの最適化、リンカー付きペプチド誘導体、さらには大量合成法を10gスケールで成功した。更に新しい手法を完成させ、続けて特許を出願し、先鞭をつけて欲しい。
以上の成果については、学会等で口頭発表を3年間で15件行っているが、原著論文による成果の公表が皆無である。専門分野での客観的な評価を受けておらず、また研究成果報告書の内容からしても、学術的な評価はやや低いと判断せざるを得ない。一方、技術的な評価では、和歌山県工業技術センター中心に特許出願が2件(内PCT出願1件)あり、また原料費削減等で追加の特許出願も予定されているため、抗菌ペプチド融合シルク以外の技術開発は着実に行われたと評価される。費用対効果は、本研究の最重要目標の「抗菌ペプチド融合シルク」の成果が不十分であったことから、投入された費用に見合った成果が得られたとは言い難い。