生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2010年度 中間評価結果

エピゲノム情報制御を基軸とする新たな植物育種技術の創出

研究代表者氏名及び所属

高山 誠司(奈良先端科学技術大学院大学バイオサイエンス研究科)

評価結果概要

本研究は、DNAのメチル化・脱メチル化現象の分子機構を解明し、「対立遺伝子間の優劣性発現」、「胚乳発生制御」、「雑種強勢」等の育種上の重要課題について新たな知見を提供するとともに、新しい育種技術開発の可能性を検討することを目的としている。このため、1対立遺伝子間のDNAメチル化制御機構の解明と網羅的エピゲノム解析、2父・母対立遺伝子のDNAメチル化を介した胚乳発生制御機構の解明、の2項目に焦点を絞って研究を進めた。

中間評価時までに、DNAメチル化に関して、ナタネの自家不和合性対立遺伝子の優劣性現象が、優性対立遺伝子が発現する24塩基のRNAがSP11の対立遺伝子のDNAメチル化を誘導するトランス因子として働き、それに相同な劣性対立遺伝子のシス配列が特異的にメチル化されて起きることを証明した。 アブラナ科植物の自家不和合性に見られる優劣性の制御について、全く新規の分子モデルを提唱したこの研究成果は世界をリードする極めて優れた成果と認められ、論文がNature誌に掲載された。 また、DNAの脱メチル化については、研究成果の一部である網羅的エピゲノム解析データを有効に活用することで新たに3種類のインプリント遺伝子を発見し、予備的ながらその機能解明も行った。研究の多くは計画通り、一部は当初計画を上回って進捗し、目標は概ね達成された。

今後とも計画に沿って研究を遂行するとともに、これまでの研究成果を含めて論文発表に努めていただきたい。