研究代表者氏名及び所属
片岡 宏誌(東京大学 新領域創成科学研究科)
評価結果概要
本研究は前胸腺の脱皮ホルモン合成系に着目した新規昆虫発育制御剤開発のための基盤作りを行い、新たな昆虫発育制御剤開発への道を拓くことを目的としている。
今までに、LC-MS/MSを用いたエクダイソンの微量一斉定量法を確立するという成果を上げることができた。しかし、中間時到達目標である未同定の生合成酵素およびその基質の同定では、複数の候補を上げることはできたが、詳細な解析はこれからとなっている。また、目標としたPTTH受容体候補の同定については、他のグループによって受容体とその詳細な解析結果が報告され、計画変更を余儀なくされた。また、応用としてのアウトプットを出すのに必要なスクリーニング系開発では、安定した系ができておらず大幅な研究の遅れがある。このように、研究終了時の最終目標である、全ての脱皮ホルモン生合成酵素の基質と経路を明らかにし、阻害剤のリード化合物を提示するには、現状はかなり遠いように感じる。以上総合的に判断すると、残念ながら中間目標の達成には至っていないと考える。
今後、生合成酵素阻害剤スクリーニング系の確立と阻害剤開発のために、酵素活性の阻害だけに注目するのではなく、転写や翻訳、アンタゴニストなども考慮し、アッセイ系の問題点を含めて大至急検討し、新規昆虫発育制御剤開発のための基盤作りを効率的に進めることができる計画に変更する必要がある。