生物系特定産業技術研究支援センター 研究資金業務

イノベーション創出基礎的研究推進事業(終了)

2013年度 中間評価結果

植物潜在性ウイルスの機能を利用した生物系特定産業の新技術創出

研究代表者氏名及び所属

吉川 信幸(岩手大学農学部)

評価結果概要

本研究はリンゴ小球形潜在ウィルス(ALSV)のさまざまな特徴を最大限に活用し、日本発の独自性の高い植物遺伝子導入ベクター(ALSVベクター)としての活用技術の開発を目的とした。具体的には、果樹類の早期開花技術開発、果樹類の効率的遺伝子導入技術の開発、農作物のウイルス病に対するワクチンの開発、ALSVをヒトの食べるワクチンとして利用するための研究を実施した。その結果、リンゴ実生の開花を発芽後2ヶ月に短縮する効率的開花促進に成功してリンゴで次世代を1年以内に得る世代促進技術を開発し、さらに感染させたALSVベクターが次世代に全く存在しないことを証明する手法を開発した。また、ALSVのウイルス誘導ジーンサイレンシングを利用したリンゴ・ナシの遺伝子機能解析技術を確立し、複数の遺伝子を同時に解析できる改良型ALSVベクターも開発した。また、植物病原ウイルスゲノム断片を導入したALSVが、病原ウイルス防除のためのワクチン株として利用できることを示し、さらに2種の病原ウイルスを同時に防除できるワクチン系の開発にも成功した。また、ウイルス粒子表面に外来ペプチドを提示できるALSVベクターの構築に成功した。

これらの成果は中間時到達目標を達成しており、その一部は当初の目標を上回っている。研究継続により、研究終了時の最終目標の達成は十分に見込まれる。今後、早期開花技術では適切な材料を持っている研究者と連携し、多様な植物への応用の可能性についても検討していくことが重要である。また、ウイルスワクチン開発では、評価系の確立されている花き・野菜等と病害の組合せを適切に選定することでより実用化に近い成果が期待される。食べるワクチンについては、実用化に向けた道筋が明確ではないため、エフォートをより重要性の高い他の2つの研究項目に優先的に配分するとともに、動物実験での効果等の調査を外部協力者に依頼する等の工夫が必要である。成果の情報発信・知財化については、多くの優れた成果を得ているにも関わらず、学術論文としての公表や特許出願が少ないことから、今後は、論文公表とそれに先立つ特許出願に最大限努力する必要がある。