生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2000年度 事後評価結果

植物病原菌類における多剤耐性の分子機構の解明

(東京大学大学院農学生命科学研究科 日比 忠明)    

評価結果概要

全体評価

研究はスムースであったが5年間の成果としてはインパクトが小さい。カンキツ緑かび病菌のDMI剤耐性がABCトランスポーターとP450デメチラーゼとの総合作用によることを証明したことは評価される。しかし、多剤耐性に関する遺伝子のクローン化とその発現制御機構解明では酵母のABCトランスポーターとのホモロジーによって単離しており、発現制御機構解析にも掘り下げ方が不十分である。薬剤耐性誘発因子の作用機作では、誘発因子としてcAMPを同定したことは評価されるが、トランスポゾンの転移の証明が不十分であり、機構解明に至っていない。

中課題別評価

(1)植物病原菌類における多剤耐性遺伝子の発現機構の解明
(東京大学大学院農学生命科学研究科 日比 忠明)    

カンキツ緑かび病菌のDMI剤耐性が、薬剤を細胞から排出するABCトランスポーターとP450デイメチラーゼとの総合作用であることをPMR1, PdCYP51両遺伝子の構造解析と遺伝子破壊により証明したことは評価される。PdCYP51遺伝子のエンハンサー配列の重複が耐性増強につながったという発見は興味深いが、エンハンサーであるとの実験的検証が少ない。ホモログをみるだけでなく、耐性に関与する個々の遺伝子について具体的な証明が必要である。

(2)植物病原菌類における薬剤耐性誘発因子の作用機構の解明
(茨城大学農学部・阿久津 克己)    

灰色かび病菌のジカルボキシイミド系薬剤耐性誘発因子の一つとしてcAMPを同定したことは評価できる。しかし、耐性誘発機構解明では、レトロトランスポゾンBotyが挿入された部位の塩基配列を詳細に解明すべきであり、薬剤耐性誘発因子のメカニズムへの切り込みが見られない。