生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2000年度 事後評価結果

生理機能調節性タンパク質集積作物の開発と利用に関する総合的基盤研究

(京都大学食糧科学研究所 内海成)    

評価結果概要

全体評価

研究は論理的に組立てられており、計画に則って実施されており、所期の目的を達成している。ダイズのコングリシニンのサブユニットの結晶化とその構造解析の成果はこの物質の生理機能の強化に繋がる構造改変の基礎となるもので、今後に期待できる。また、イネ胚乳におけるダイズグリシニン遺伝子の高発現形質転換個体作出に向けた基礎研究は高く評価できる。

中課題別評価

(1)生理機能調節性タンパク質の分子設計と利用に関する基盤的研究
(京都大学食糧科学研究所 内海成)    

ダイズの主要成分であるグリシニンとコングリシニンの立体構造の解明は、評価できる。食品に由来する種々の生理機能性ペプチドを探索し、多くの基礎的知見を得たが、まだ断片的知見である。第2世代型遺伝子組換え作物としてのダイズグリシニン遺伝子導入イネのラットによる毒性試験は評価できる。

(2)生理機能調節性タンパク質集積作物の分子育種
(農林水産省生物資源研究所 高岩文雄)    

ダイズタンパク質遺伝子のイネへの導入に成功したことは評価できる。形質転換作物の育成にはかなりの期間を要するので、実用化への準備が必要である。今後、イネ胚乳特異的発現系における時期特異性と量的特異性を達成するシステムの構築が必要である。
(3)食品アレルゲンの活性発現機構と遺伝子転換作物のアレルゲン評価に関する基盤的研究
(名古屋大学大学院生命農学研究所 松田幹)    
中課題(2)を実用化するために必要なデ-タをかなり蓄積できた。各種アレルゲンの同定の成果は評価できる。ダイズグリシニン遺伝子導入イネ種子で内因性アレルゲンタンパク質に変動がないことを示したことは、組換え体利用に向けた良い成果である。