生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2000年度 事後評価結果

光過剰による光合成抑制機構の解明と遺伝子導入による回避システムの開発

(農林水産省 農業生物資源研究所 徳富 光恵)    

評価結果概要

全体評価

C4植物の光合成に関わるキー酵素の遺伝子をC3植物であるイネなどに導入することでC4光合成酵素を高発現させることに世界に先駆けて成功したことは農業上有用な成果として評価できる。また、学術的な面においてもC3植物からC4植物への進化の機構について、今後にいくつかの課題を提示した点で高く評価できる。

中課題別評価

(1)光合成効率の低下要因の解明と遺伝子導入による光合成効率の 改良
(農林水産省 農業生物資源研究所 徳富 光恵)    

他の中課題との連携のもとトウモロコシPEPC、PPDK、ベントグラスのPEP-CKなどを導入した形質転換イネを作出し、これらを利用してエネルギーのアイドリング系、HSP20によるリサイクリング系、ELIPによるスカベンジング系等の生理・生化学的解析を進め、一定の成果をあげている点は評価できる。

(2)C3植物へのC4光合成回路の付与
(名古屋大学 生物分子応答研究センター 松岡 信)    

C4植物の光合成酵素遺伝子がC3植物でもC4植物と同様に機能しうるという発見は予期せぬ画期的成果として高く評価できる。また、光合成系の進化についてC3からC4への可能性を示したことは学術面からも高く評価できる。

(3)遺伝子導入による芝草の光合成機能と環境ストレス耐性の向上
(株式会社ジェイツー 趙 徹)    

前半はやや出遅れたが、ノシバPEP-CKのゲノム遺伝子を単離し、それをベントグラスに導入して形質転換植物を作出するなどして、最終年度までにかなり遅れを取り戻すことができた。