生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2001年度 事後評価結果

新規脱窒菌を用いたN2O抑止型好気脱窒システムの構築と水処理への応用

(東京大学大学院農学生命科学研究科 祥雲 弘文)

注)本課題は、総括研究代表者の異動により、最終年度に、「放線菌Streptomyces antibioticusの新規脱窒系に関する基礎研究」(東京大学大学院農学生命科学研究科 祥雲 弘文)と「新規好気脱窒系の機構解明と水処理のための応用技術開発」(筑波大学応用生物化学系 高谷 直樹)の2中課題に、分割・再編されたが期間中大部分が単独機関による研究として遂行されたため、評価にあたり、単独機関課題として扱った。

評価結果概要

全体評価

本研究は、学術的には脱窒素代謝系、特にこれまであまり代謝的な研究が進んでいなかった、真核生物であるカビ、酵母、放線菌などの比較的好気条件での脱窒系について研究を進め、窒素代謝に関する生化学の教科書の一部を書き換えるような多くの成果を得たことは、基礎生物学の研究としては十分に高い評価を与えてよい。
さらに、研究代表者が指摘しているように、真核生物による脱窒系は自然界でも重要なプロセスかもしれないので、新しい手法の開発も含めて今後の検討が必要であろう。
しかし、この課題は、「温室ガスN2Oの発生という重大欠陥のある現在の技術に代わる新たな水処理の脱窒プロセス開発」という開発研究に力点が置かれている課題である。基礎的研究成果としては興味ある知見がいろいろ見出されたとはいえ、本命ともいうべき開発的研究項目においては、やや成果不十分の印象を免れない。すなわち、新しい脱窒菌のスクリーニングによって、Pseudomonas stutzeri TR-2株等の新規脱窒菌の取得、カビと細菌の混合培養による好気的脱窒法の考案、それぞれの多孔性固定化担体の開発などの成果をおさめ、単一の培養槽内で好気的な硝化反応と、還元的な脱窒反応を同時に進行させるために、パイロットプラントの設置運転にまでこぎつけるなど、一定の評価できる成果をあげている。しかし、パイロットプラントの稼働が遅れたため、具体的な試験データが得られていないなど、問題も残している。また、目標設定における微生物的アプローチから水処理工学的アプローチへの成果の受け渡しがあまりうまくいっておらず、せっかくの微生物学的な貢献が水処理技術にあまり寄与していないのは残念である。