生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2001年度 事後評価結果

消化管機能の分子生物学的解析と計画的食品設計

(東京大学大学院農学生命科学研究科 加藤久典)

評価結果概要

全体評価

本研究は、消化管の機能を主に内分泌、代謝器官、免疫器官の3つの側面から分子生物学的に包括的、総合的に解析し、新しい食品、特に高齢者用の食品の設計に活用することを目的とした意欲的なものである。しかし、複雑系である消化管全体にわたって分子生物学的解析を行うのは困難であり、5年間で達成可能な部分に焦点を絞ることが求められていたが、最後まで焦点が絞りきれずに、散発的な研究に終り、課題全体として統一的な成果を得られなかったことは残念である。勿論、個々の研究内容、成果のレベルは様々であり、中には高く評価すべき優れた研究成果もあるが、それらを連携し、その成果を応用に結び付け、「新しい視点で食を設計し、新機能性食品を開発する」という目的の達成には到っていない。

中課題別評価

(1)消化管の諸機能の制御を意図した食品設計の基盤解析
(東京大学大学院農学生命科学研究科 加藤久典)    

レプチンによる摂食抑制機構、消化管でのT細胞のアポト-シス誘導による免疫寛容の可能性、消化・吸収の際の腸管バリア-になるタイトジャンクションの分子的機構についての知見など、個別的には優れた成果が見られる。しかし、これらの研究はレプチン以外は小課題の枠を越えた「中課題としてのまとまり」に高まっていない。また研究の展開は実験動物の域に留まっており、ヒトに利用できる成果にまでは到達していない。

(2)消化管の諸機能の制御を意図した食品設計の基盤解析
(東京大学大学院農学生命科学研究科 加藤久典)    

当初は消化管の神経機能の制御に関する研究が行われたが、目的を達成せず、微量金属に関する研究テ-マに変更した。微量金属の吸収・排出に関わるトランスポ-タ-の分子レベルでの解析を試みた結果、トランスポ-タ-の存在を見出したが、その生理機能は十分には明らかにされていない。

(3)消化管の代謝機能の制御を意図した食品設計の基盤解析
(高崎健康福祉大学健康福祉学部 渡辺道子)    

高グルタミンペプチドを作製し、生理機能を調べた結果、小腸の機能促進に有効であることを明らかにした。また、低アレルゲン化小麦粉による経口免疫寛容の誘導とその解析を行い、低アレルゲン化小麦粉によるアレルギ-予防・治療効果を示し、実用化の面で健闘した。