生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2003年度 事後評価結果

ミツバチの脳機能に働く遺伝子を利用した新品種開発等に関する基礎的研究

(東京大学大学院理学系研究科 久保 健雄)

評価結果概要

高次真社会性昆虫であるミツバチのカースト間における役割差異、働きバチにおける齢差分業による労働の違いを、それらの行動を支配する遺伝子解析から解明しようとする試みは、これまでに行われたことがなく、世界に先駆けてミツバチの「分子社会生物学」とも呼ぶべき新たな研究分野を開拓しつつある点で、その着眼点は独創性があり、学術上の意義も大きい。
基礎研究としては、これまでの研究結果のどれをとっても極めて興味深いし、その研究水準も十分に高い。ただ、さらに望むらくは結果に対する「詰め」である。今後は、現在最終局面にあるミツバチゲノム解析の結果をどうスマートにとり込むかが課題であろう。
過去5年間行ってきた研究をさらに押し進めれば、本研究課題で設定した目的達成に向けたさらなる飛躍が期待できる。本研究の継続がミツバチの行動を規定する遺伝子とその分子機能の解明に大きく貢献をするのは疑いない。さらに、ミツバチで特定された遺伝子のホモログが哺乳類に存在することは、本研究が動物界全体で行動を規定する遺伝子とその機能解明のための研究の先導的役割を担うことが出来る可能性を示している。