生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2003年度 事後評価結果

行動特性の育種改良を目指した、家畜の脳内物質関連遺伝子の解析

(岐阜大学農学部 村山 美穂)

評価結果概要

イヌは人類との長い共同生活から、行動特性について最も詳細な観察が行われている動物であり、しかも盲導犬や麻薬探知犬のような特殊の機能を備えた品種を対象として、ヒトの精神作用に影響を与える脳内物質関連遺伝子の面から行動特性を評価するという発想は非常にユニークなものとみなせる。 本プロジェクトにより、ドーパミン受容体やセロトニン受容体に関連した遺伝子と行動特性との関連についての手がかりが得られてきた。まだ見るべき成果には至っていないが、家畜を対象とした脳内物質量調節遺伝子の研究は、世界的にみても緒についたばかりであり、これまでにない新しい研究領域の基礎を築いてきた点で評価できる。
また、イヌの行動特性を比較するための指標を整理し、それらを利用して攻撃性の強弱の比較について予備的成果が得られた。このような研究は、ほかの動物では行えない独創的なものといえる。
しかし、行動特性にかかわる脳内物質は単純なものではなく、今後、詳細な検討が必要であろう。本研究では少数ながら候補遺伝子が浮かび上がってきており、また、有用犬のDNAバンク作製の体制ができてきたことから、行動と神経系の関わりといった基礎的研究と、有用犬の選抜などの応用面の両方に今後寄与することが期持できる。
これらの情報や手段を応用面に活用する場合は、遺伝的な情報と環境の効果との相対的な影響力にも配慮する必要がある。