(京都大学大学院農学研究科 森山 達哉)
評価結果概要
本プロジェクトはダイズ種子中に含まれる成分中に、ヒトなど哺乳動物において中性脂質等の脂質代謝を適正化させるタンパク質を見出し、生体への作用機作を明らかにするとともに、生活習慣病予防を目指した食品の開発へ連結させようとするものであり、以下のような成果が得られた。
単離ダイズタンパク質のうちβ-コングリシニンのもつ脂質代謝調節機能が高血糖やインスリンレベル改善効果をもつこと、その効果がβ-コングリシニンに内在する特異的なペプチドに存在することを示すとともに、その作用機構として肝臓における脂肪酸合成酵素の抑制、脂肪酸β酸化系の亢進などを示した。また、消化管における脂質の吸収抑制などにも関与していることを示した。
本プロジェクトの成果によって、人類が長年食用としてきたダイズ中に中性脂肪のレベルを適正化する成分、β一コングリシニン、及びこれに由来するペプチドが見出され、生体に対する作用機作も、かなりのレベルで明らかにされた。さらに、本ペプチド類の食品素材としての利用が十分可能であることを示したことは、新規な生活習慣病予防食品の開発を可能とするもので、先進国で問題となっている肥満の克服に貢献するものとして高く評価される。
ただし、今後に残された課題として、機能性ペプチド類の同定・構造解明が完成していないことや、これらの有効成分を高濃度に含有するダイズ品種が検索できていないことなどが指摘される。