生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2004年度 事後評価結果

生体関連触媒を用いる植物資源からの高分子新素材の創出

(大阪大学大学院工学研究科 宇山 浩)

評価結果概要

本研究では次世代の工業原料の中心となるべき天然の生物資源、特に植物由来のバイオマスを原料に、それと相性のいい生体関連触媒(酵素、酵素モデル錯体)を用い、適切に制御された反応手法を開発し、天然由来の新規高分子材料の創製を目的としている。
本研究はグリーンポリマーケミストリーに合致するものであり、再生可能資源として植物資源を用い、革新的合成手法の開発として制御された酵素触媒重合(カップリング)技術の開発、および得られた素材のナノコンポジットの創成を通して循環型化学工業の構築に貢献するものであり、優れた研究であるということができる。
これからの合成化学において貢献しうるものとして、生物資源を利用した新素材という、研究の方向性の着想が優れていること、さらに、そのための利用可能な新素材の特質を想定した、研究の進め方、すなわち、何と何を重合させるのかという目標設定が、具体的で優れていたことがまず上げられる。また、こうした目標設定に対して、数多くの実験から、それぞれの素材に対して、新しい重合方法を開発し、高分子重合物を作成し得たことの科学的また技術的な貢献を評価することが出来る。これらの結果として、数多くの新素材を合成し、それらの諸性質を調べた。そのうちの幾つかは、所期に目的とした性質を満たしており、今後の展開が期待出来るものもある。ただ、最終的に、直ちにこうした目的のために利用可能であるというものを作り得たというところまでは行かなかったのは、やや残念ではある。
今後の研究(学問)分野への波及効果は、多数のインパクトファクターの高い国際論文誌への論文掲載に現れており、申し分ないと思われる。
本研究により開発の対象となりうるような材料のラインアップが提供されたので、今後タ-ゲットを絞って実用化に向けた開発研究を行うことにより、生物系特定産業に寄与しうる成果が得られるものと期待される。