生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2004年度 事後評価結果

ニワトリモノクローナル抗体の新しい作成技術・実用化技術の開発に関する研究

(広島大学大学院生物圏科学研究科 松田 治男)

評価結果概要

本研究の成果は、BSE(牛海綿状脳症)をはじめとする種々の家畜感染症での高感度診断法に役立つものと期待できる。一方、ヒトゲノムや家畜ゲノム計画の成果は、今後タンパク質レベルでの研究につながると考えられるが、その際にニワトリモノクローナル抗体はマウスモノクローナル抗体では得られない大きな利点を有する。また、ヒト化モノクローナル抗体による各種疾患の抗体療法、ガン治療におけるミサイル療法への応用でも期待できる。新事業として発展させる基礎は十分に固まったものとみなせる。
本研究においては、従来のマウスシステムでなくニワトリのシステムで哺乳動物のプリオン蛋白に対するモノクローナル抗体を得ようとした方向性ならびに作出手技を確立した点は評価できる。ハイブリドーマ法とファージディスプレイ法の組み合わせにより、ニワトリモノクローナル抗体の作成システムを確立し、先端的な抗体作成と診断利用の技術開発をニワトリ抗体システムで確立したことは高く評価できる。また、宿主抗原に対するニワトリの抗体レパートリーが哺乳動物と異なることが示され、今後の利用に期待がもてる。しかし、産業への波及を考えたとき、ファージディスプレイ法を用いていくつかのユニークな抗体が得られているが、ニワトリモノクローナル抗体は大量生産できないなどの問題があり、産業化にはまだ困難が予想される。
全体的にみると、哺乳動物に共通して発現しているようなタンパク質に対する特異抗体を得る際には、このニワトリの系は有用な方法でありその技術を確立した点は評価できる。