生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2005年度 事後評価結果

細菌「超チャネル」の構造生物学的解析と環境浄化型「スーパー細菌」の創成

(京都大学大学院農学研究科 村田 幸作)

総合評価結果

極めて優れている

評価結果概要

本研究は、Sphingomonas属細菌A1株の体腔「超チャネル」の機能と構造を解析し、この機能を他の有用菌に分子移植することによって、環境浄化型「スーパー細菌」の創成の可能性を追究することを目的とした。主な成果として、(1)A1株の全ゲノム構造を決定し、この菌の形態学的特性と機能多様性の解析基盤を築いたこと、(2)体腔とABCトランスポーターの構造と機能を明らかにしたこと、(3)細菌多糖の分解に関する酵素群の構造生物学的解析により、新規生理機能性糖質の分子設計など、糖質科学の発展に資する多くの知見を得たこと、(4)「超チャネル」形成遺伝子群を他の有用細菌に分子移植することにより、環境浄化型「スーパー細菌」を創出したことなど、終了時の目標を達成しており、これらは高く評価される。また、当初の計画には無かった酵母のDNA形質転換現象を明らかにするなど、副次的な成果も多く得られている。
一方、超チャネル構成タンパク質の一部については、結晶構造解析が未達成であり、超チャネルの開閉制御についてほとんど解析されておらず、体腔が内側にくぼむ機構のメカニズム、体腔の壁が中心部へ向かって移動しているのかどうか、などの解明は現時点では未完である。更なる研究の展開、全容解明が期待される。
本研究は、優れた指導力と研究体制のもとに遂行されており、情報発信に関しても申し分はない。反面、成果の質・量からみて、特許申請の数が少なかった点が惜しまれる。以上のように、幾つかの点において今後の解析が残されているが、総合的に判断して、当初の目標を達成していると判断された。