生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2006年度 事後評価結果

動物ウイルスによる宿主細胞制圧機構の解明

(東京大学医科学研究所 甲斐 知恵子)

総合評価結果

当初計画どおり推進

評価結果概要

モービリウイルス3種(MV、RPV、CDV)の感染時に発揮されるウイルスによる宿主細胞制圧機構および病原性発現機構を体系的に解明することを目的として、近年の類似エマージングウイルス(ニパウイルスなど)や将来新たに出現するエマージングウイルス感染症に役立てるという提案で採択され、始められた研究であるが、個々の現象の発見に留まっており、当初の目標が達成されたとは考えにくい。モービリウイルス感受性細胞を確立したこと、マイクロアレイ解析により新規あるいは従来とは異なる知見を得た点は評価できるが、もう少し詳細な検討が必要であった。ウイルス側だけの情報に留まらずに、宿主側とのダイナミックな相互作用を経て出現してくる病原性について、網羅的に捉えるという研究課題の提案は評価できた。しかし、最終的に得られてきた成果については、その多くが用いた系のみの機序解明になっており、どこまで普遍的に認められることなのか曖昧になっている。言い換えると、それぞれのウイルスについてそれぞれ別の角度からのアプローチにおいて得られた各論の成果に留まっている段階と思われ、これら成果を相互に関連付けて述べることができる、総合的な成果が期待された。
これまでの成果については、一部は既に論文として公表されているが、その多くは現在進行形の情況である。さらに、各ウイルス感染症への総合的な取り組みという観点から見ると、さらに踏み込んだ研究へと継続発展させる必要がある。特に、リバースジェネティクス系を独自の系で確立しているので、この系を最大限に利用すれば、多くの波及効果は期待できると思われる。その上で、産業への波及が期待される取り組みになるものと考えられる。