生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2007年度 事後評価結果

植物の生長を統御する根の水分屈性と水獲得戦略の解明

(東北大学大学院生命科学研究科 宮沢 豊)

総合評価結果

当初計画どおり推進

評価結果概要

根の水分屈性は、植物学における昔からの重要な課題である。現象自体は古くから知られているが、その分子機構は長い間未解明であった。
代表者らは、根における水分屈性の存在を再確認するとともに、重力条件下においても水分屈性を示す突然変異体を作出し、これを利用した実験系を確立したことは一定の評価ができる。また、モデル植物アラビドプシスを用いた分子遺伝学的解析により、水分屈性現象に必須なMIZ遺伝子を単離し、解析を進めたこともある程度は評価できる。同定された新規遺伝子が、将来、地中の水分を効率的に利用できる作物の育種に応用できる可能性はある。
しかし、MIZタンパク質の機能解明にまでは踏み込めず、また、水分屈性の基礎研究が作物の水分利用効率の向上にどのように利用できるか、その基盤となるような基礎実験データが得られることが望まれたが、これに関しては見るべき進展が得られていない。水分屈性の分子遺伝学はこれからも発展が期待できる分野であり、今後さらなる重要な発見が続くことを望む。
その際、作物栽培学の視点からは、水分屈性の強化によって耐乾性を大幅に付与するというやや短絡的な考察をするよりも、屈性のメカニズムの解明、とくに重力屈性と共通する部分と異なる部分を解明することを中心に、(1)刺激の感受、(2)刺激の変換、(3)刺激の伝達、(4)根の屈曲について検討することの方が、一見、迂遠な道ではあるが科学的価値が高く、最終的に作物育種や乾燥地農法等現実問題への応用に寄与できる可能性が高いと考えられる。