生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2007年度 事後評価結果

SPMダイレクトゲノム解析法の開発

(農研機構 食品総合研究所 杉山 滋(19.4~) 大谷敏郎(~19.3))

総合評価結果

優れている

評価結果概要

(1) 全体計画

本課題は、染色体を見る、切る、読むの技術を総合化して、染色体の必要な箇所のみの塩基配列情報を取り出すことを目指したものであり、3つの課題のどれが欠けても、目的を達成することが困難なものである。一部には当初予定が十分達成されたとは言えない部分もあるが、全体としては優れた研究であったと評価したい。
この研究課題のように、工学者と生物学者の共同研究である場合には、そのグループ間での密接な連携や強く目的意識を共有することが必要であるが、このプロジェクトは、それが極めてうまくいったケースであろう。通常ゲノム解析には膨大な費用と時間を要するが、本課題は必要とする部位の遺伝子を掻き取って、その塩基配列を簡便に読むという極めて優れたアイディアを達成するために行われた。見ると切るについては、ほとんど完成の域にあり、残りの読む技術についてもかなりのところまで到達していると思われる。この研究の間に開発した個々の要素技術の価値は高いものであって、いろいろな面に活用することが出来ると考える。そして、今後本技術を進化させることによって、さらに優れた技術が生まれることを期待したい。

(2) 中課題別評価

中課題A「走査型プローブ顕微鏡(SPM)による遺伝子のナノ検出と操作」
(農研機構 食品総合研究所 杉山 滋(19.4~) 大谷敏郎(~19.3))

主として工学的な手法をベースに染色体を見る、切る装置の開発を目ざした。その結果、SNOM/AFMの光学系・測光系の改良等により、物理地図作成や近接したBACクローンの分離を可能とする分解能を持った検出系を確立した。また、AFMの探針制御法などの基礎的技術を開発すると共に、AFMを使って染色体上の特定位置を200nm程度から任意の幅で、切断・回収する装置の開発に成功するなど多くの成果を得ている。開発した技術は新たな遺伝子配列を解明すること以外にも応用可能であると考えられることから、その用途を新たに見いだすことも今後に向けて期待したい。

中課題B「染色体ナノフラグメント解析システムの構築」
((独)農業生物資源研究所 山本 公子)

本中課題で解決すべき最大の問題点は、わずか4分子のDNAを増幅し、その塩基配列を読み取る手法を確立することであった。この課題に対して、多くの試行錯誤を行いながら、掻き取った断片の一部のDNAを増殖・解析することに成功、この塩基配列情報を利用したPCRによるBACスクリーニングを組合せて切断部位に相当するBACクローンを得るなどしており、一定程度答えたと判断している。この間、ごく微量のDNAを増幅するため酵素の精製、プライマー問題の工夫などの過程で多くの成果を得ている。また、中課題Aを支援するため、清浄な表面を有する染色体調製法及び改良FISH法の開発と継続的な材料供給、ダイレクト物理地図作成法のアルゴリズム開発なども行われ、本研究の中で役割は大きかったと評価したい。