生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2008年度 事後評価結果

Super-SAGE 法を利用したイネ・いもち病菌相互作用の解析

(財団法人岩手生物工学研究センター 主席研究員 寺内 良平)

総合評価結果

優れている

評価結果概要

イネのいもち病は特に寒冷地において重要な病害であり、生産の安定化、省資源、環境保全などの様々な観点から抵抗性育種が急務である。また、菌と宿主の間の相互作用の形で現れる親和性のメカニズムは生物学的にも興味深いテーマである。
本課題は、侵入菌糸を直接見ることが出来る葉鞘接種法を用いていもち病菌がイネに侵入している細胞を特定して切り出し、提案者が改良・開発したSuper-SAGE 法を用いて感染の場において何が起こっているかを分子生物学的に明らかにしようとしたものである。
イネといもち病菌の双方のゲノムが読まれ、高速解析を可能とする次世代シーケンサーが開発されたこと等を背景としたタイムリーな提案で、Super-SAGE 法では、これまでの検出塩基数を大幅に超えたタグを抽出して解析できるという利点があるため、注目に値する成果が出た。
具体的には、Super-SAGEアレイ法の確立、SuperSAGE-RNAi法の基礎的実験、いもち病菌エフェクター遺伝子群の同定、いもち病菌Ina168株と70-15株の比較によるPia、PiiおよびPik座のタンパク質遺伝子の特定、イネのTILLING系統の作出、などに顕著な成果を示した。今後、更にこの成果を踏まえた植物病理学、育種学、植物生理学等の研究者間の成果交流を取り進めるとともに、種苗業者、遺伝子発現解析機器メーカー、解析委託業者等との接点を確保することで、新たな生物産業の起業化に結びつける努力が望まれる。
一方で、Super SAGE-RNAi法については基礎的試験にとどまり、イネやいもち病菌で行なわれずいもち病菌のTILLING法も行なわなかったため、中間段階で計画した遺伝子組換えによる有力ないもち病抵抗性イネの作出には至らなかった。
得られた成果については、今後も、論文発表は続くと期待され、全体としては、当初に予定していた以上の研究成果が得られたものと認められる。