生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2008年度 事後評価結果

セスバニア-<em>Azorhizobium caulinodans</em>系を用いた根粒成熟の分子メカニズムの解明」

(東京大学生物生産工学研究センター 小柳津 広志)

総合評価結果

やや不十分

評価結果概要

本研究では、非マメ科植物に生物窒素固定能を付与することを目標に、セスバニア-Azorhizobium caulinodansの茎粒共生系で根粒成熟の分子メカニズムの解明を行った。
多くのA.caulinodans変異株を作製、スクリーニングし、根粒形成に関与する要因を検討、膜オートトランスポーターAoaAが菌外多糖生産を経て病原応答を抑制していること、リポ多糖(LPS)が宿主での成熟過程を促進する因子である可能性が高いことなどを明らかにした。その他、茎粒菌A. caulinodans ORS571株の全ゲノムを決定、トランスクリプトーム解析などによりORS571株が根粒菌のプロトタイプである可能性を示したこと、新しい視点でのミヤコグサ共生変異体の探索、共生窒素固定能増加と根部Autoregulationメカニズム解明につながるLjRDH1変異体を発見したことは評価できる。ただ、残念なことにLjRDH1遺伝子の単離には至っていない。また、Ljign1変異体と共生菌のLPS関連遺伝子の相互作用など興味深い結果を得ているが、その先、植物側の遺伝子単離や導入による分子遺伝学研究は残念ながら実施されておらず、結果的に根粒成熟機構の解明、非マメ科植物への窒素固定能の付与への可能性を目指すという当初の目標からはやや遠い結果となっている。研究が多岐にわたったため、解析が浅くなった感はあるが、本研究では貴重な基礎的成果も得られており、今後それらについての情報発信を期待する。