生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2008年度 事後評価結果

微生物を用いたペプチド大量生産法の開発

(北海道大学大学院先端生命科学研究院 相沢 智康)

総合評価結果

当初計画どおり推進

評価結果概要

本研究は、「どのようなペプチド・タンパク質も極めて大量に」生産することを目的として、大腸菌および酵母を宿主に抗菌ペプチドなどの有用ペプチドの大量生産を試みた。
大腸菌を宿主にしたペプチド生産では、チオレドキシンやラクトアルブミンを融合パートナーに利用し、研究用として利用可能な量の各種ペプチドを生産できることを示した。その後、ペプチドの更なる生産性の向上を目指して共発現系について不溶性顆粒化技術を検討した結果、パートナータンパク質とペプチドが逆電荷をもつことが、大量発現に重要な要素となることを見出すなど一定の成果をあげた。また、酵母を宿主にしたペプチド生産では、Pichia pastorisがチオレドキシンを1000mg/Lという高効率で生産することを発見し、チオレドキシンを融合パートナーとしたペプチド生産系の開発を試みた。タキプレシンやラクトフェリシンの場合はプロテアーゼで分解され生産性を上げられなかったが、GBPをチオレドキシンのN末端へ融合させた場合には、プロテアーゼ分解を受けず、融合型GBPが大量に生産された。このように酵母におけるチオレドキシンの高発現系を利用したペプチドやタンパク質の生産に関する基盤的な成果が得られた。
大腸菌を利用した共発現系、酵母によるチオレドキシンを利用した高発現系の開発とも、当初目標とした産業的に利用可能なレベルに至っていないが、今後これらの特徴的な系のさらなる改良やタグタンパク質・共発現ペプチドの相性の見極め等により、本研究で目標とした「どのようなペプチド・タンパク質も極めて大量に」生産できる系へと発展させ、多様なペプチドが食品分野や農林水産業分野で利用されることを期待する。