生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2010年度 事後評価結果

トランスジェニックニワトリ作製のための生殖工学的基礎研究

(名古屋大学工学研究科 飯島 信司)

総合評価結果

やや不十分

評価結果概要

本研究は、ニワトリ培養始原生殖細胞に擬似ウイルスを用いて有用物質遺伝子を導入し、トランスジェニック(TG)ニワトリを効率的に取得することを目的とした。本研究者らは、この計画を立てる以前、2005年にすでにTGニワトリでの成果を発表しており(J.V. 79, 1086)、その成果を買われて、この研究がスタートした。具体的な改良点は、(1)インテグラーゼ、IR、YY1などからなる人工ベクターで巨大蛋白遺伝子を導入する、(2)糖鎖転移のTGニワトリを作製する、(3)始原生殖細胞への遺伝子導入とサイレンシングを回避する、であった。
終了時の成果を見ると、最初の目標であった始原生殖細胞に巨大蛋白遺伝子を導入し、効率良くTGニワトリを作出することには成功しなかった。(1)の人工ベクターの研究は通常の細胞を用いて導入効率を上げることが出来た点は評価できる。しかし、目標とした始原生殖細胞への巨大蛋白遺伝子の導入は難しいようである。(2)の糖転移酵素の遺伝子導入により糖付加した蛋白を得られたことは評価できるが、目的とするTGニワトリは作製できていない。この研究の目的は遺伝子発現キメラ動物でなくTGニワトリの開発であったはずである。(3)の始原生殖細胞培養法の確立、遺伝子導入とサイレンシングの回避は容易ではなかったようである。しかし、YY1などの酵素のサイレンシングとの関連を見出した点は高く評価できる。