生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2010年度 事後評価結果

標的特異的LINEを利用した新規トランスジェニックツールの開発

(東京大学大学院新領域創成科学研究科 藤原 晴彦)

総合評価結果:

優れている

評価結果概要

本研究は、昆虫で見つかったテロメアに転移するレトロトランスポゾン(LINE)を、適切なウィルスベクターに組み換えることによって、特定の染色体の目標とする位置に遺伝子を導入する技術の開発を目指した高い独創性をもった課題である。なお、中間評価を受けて、研究対象を一部絞り込こんで後半の研究が実施されたが、これは適切な措置であったと判断される。
本研究の成果として、昆虫では、カイコの胚へのmRNA注入が遺伝子導入に有効な手段であることが判明した。魚では、ゼブラフィッシュに導入したEGFP遺伝子の発現およびこれが次世代まで保持されていたことを確認した。脊椎動物の研究モデルを用いて、外来遺伝子を発現した個体を作成するとともに次世代まで保持できたことは画期的な進歩である。ヒト細胞では、目標とする染色体(28SrDNA)の目標とする位置に外来遺伝子(R201)を特異的に転移させることには成功した。これら技術の生物系特定産業における実用化には、本研究で得られた基礎的な成果をさらに発展させ、標的部位に再現性高く遺伝子を組み込むとともに自由自在に遺伝子発現させることができるようにすることが必要であるが、本研究の成果は、画期的な技術革新として、有用動物の作出にとどまらず多岐に亘る産業面に大きく貢献すると期待される。このように、独創的な目標を達成するとともに、レベルの高い学術誌に多くの論文として研究成果が発表されたことから本課題を高く評価する。