生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

1999年度 中間評価結果

絹タンパク質の構造-物性相関の徹底解明とバイオセンシングシステム等への応用

(東京農工大学工学部 朝倉 哲郎)    

評価結果概要

全体評価

絹タンパク質の構造解析に関する研究は、ほぼ予定どおりの進展がみられ、幾つかのレベルの高い新しい知見を得ており高く評価できる。しかし、バイオセンシングシステム等の開発に関する研究は、一定の基礎的知見は得られているものの、必ずしも本来期待していた成果は得られておらず、今後も独創性やインパクトのある成果を期待することは困難と考えられる。
今後は、中課題(1)に絞り込んで、重点的に実施することが妥当。

中課題別評価

(1)絹タンパク質の構造-物性相関の徹底解明と機能分子設計
(東京農工大学工学部 朝倉 哲郎)     

研究はほぼ予定どおりの進展がみられ、特に新たに開発した各種の固体NMR分析法と同位体ラベル法を駆使して、絹タンパク質の一次構造や結晶領域構造の特徴、主鎖・側鎖の基本構造等に関して多くの新しいレベルの高い基礎的知見を得たことは高く評価できる。
今後は、非晶領域、SilkI型構造、絹タンパク質の相互作用で構築される絹繊維の構造等の解明を進めるとともに、新規絹の分子設計・再生絹繊維の作成等の研究に重点をおいて行うことが必要。

(2)絹タンパク質を用いたバイオセンシングシステム等の開発
(蚕糸科学研究所 勝野 盛夫)    

絹繊維の基礎物性評価システムの整備、繭中の抗菌性物質の抽出・同定、ルテニウム錯体を用いた温度・湿度センサーの開発の研究におい一定の基礎的知見を得ている点は評価できるが、それらの成果は、絹タンパク質の構造解析の知見を基に新たな機能を持つ絹繊維やバイオセンシングシステム等を開発するという本来の研究目標に照らして不十分であり、今後においても独創性やインパクトのある成果を期待することは困難であると考えられ、本研究は11年度でもって終了とし、今後はこれまでの研究でに得られた知見を生かして、中課題(1)研究実施に協力していくことが望ましい。
→ 平成11年度で研究終了