生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

1999年度 中間評価結果

スギのゲノム解析とその高度利用に関する基礎的研究

(森林総合研究所 長坂壽俊)    

評価結果概要

全体評価

本課題は6中課題で構成され、目的、内容も広範囲に及んでおり、これまでの進捗状況、成果にもかなりの差が見られる。従って、今後は課題全体の目的とこれまでの進捗状況や成果に即して、スギの高密度連鎖地図の確立に重点化すべきである。

中課題別評価

(1)スギゲノム上の遺伝マーカーの開発と高密度基盤連鎖地図の確立
(森林総合研究所 津村義彦)     

スギの実生及び内樹皮に由来する3500のcDNAクローンの塩基配列を明らかにし、PCRベースのDNAマーカーによる連鎖地図を作成するなど、林木分野のゲノム解析研究として最先端を行く成果を上げている。

(2)in situハイブリダイゼーション及びトリソミー系統を用いた染色体と連鎖群との対応
(愛媛大学 日詰雅博)     

確実に識別同定できる染色体やトリソミーの整備も一部に限られている進捗状況にあり、研究期間内に目標を達成することは困難と見なされ、本年度で終結することが妥当と判断される。
→ 平成11年度で研究終了

(3)スギ材質関連遺伝子のQTL解析
(林木育種センター 近藤禎二)  

 スギにとって重要形質である材質関連形質のQTLを連鎖地図上に位置付けたことは高く評価できる。

(4)スギ雄性不稔遺伝子のマッピング解析
(新潟大学 平 英彰)     

スギの雄性不稔発生機構、遺伝様式、雄性不稔に及ぼす環境の影響、雄性不稔遺伝子の頻度などに一定の成果が見られ、雄性不稔遺伝子とリンクするマーカーについても不十分ながら明らかにするなど、当初の目標をほぼ達成しているので、本年度で終結することが妥当である。
→ 平成11年度で研究終了

(5)環境ストレスがスギの遺伝子発現及び遺伝的多様性に与える影響の解析
(静岡大学 向井 譲)     

環境ストレスに応答する遺伝子群の特定・解析は、これまでの進捗状況から達成することは困難と見なされる。しかし、花粉由来のcDNAクローンの解析研究は、連鎖地図の高密度化に貢献することが期待されるので、中課題名を変更して推進する必要がある。

(6)スギゲノム上の遺伝子マーカーのシーケンス情報に基づく分子進化学的解析
(九州大学 館田英典)    

スギ種内・種間の遺伝的変異を把握するために、DNA解析と変異検出のためのモデルの構築・検証を進めており、スギと近縁樹種との系統関係や適応的変異の検出法に成果が上がっており、今後も期待できる。