生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

1999年度 中間評価結果

微生物由来の環境保全型害虫防除蛋白質に関する基礎研究

(岡山大学工学部 酒井 裕)    

評価結果概要

全体評価

害虫防除システムの構築を目標に掲げているが,本研究課題はBT蛋白質の防除剤として利用する場合の基礎的研究の集積にある。中課題2はオリジナリティのある成果が得られているが,中課題3,4は今後に期待する状況にある。遅れたグループは建て直しが必要である。各中課題の研究成果が相互にフィードバックされているか疑問であり,研究チームとしての有機的連携が求められる。全体に公表論文数が極めて少なく,一層の努力が必要である。

中課題別評価

(1)環境保全型害虫防除剤の殺虫メカニズムに関する研究
(大阪府立大学農学部 姫野 道夫)     

Cry1A蛋白質遺伝子に対する3種の結合蛋白質(受容体)を見出したことは大きな成果である。しかし,キメラ遺伝子の発現による融合蛋白質の活性を確実にとらえていない。また,BTトキシンとジフテリアトキシンの作用活性の差を考慮するとキメラ蛋白質の作製戦略の再検討が必要である。

(2)環境インパクトの小さい殺虫蛋白質の動態の解析と害虫防除システムの構築
(岡山大学工学部 酒井 裕)   

 殺双翅目昆虫蛋白質遺伝子cry4A, cry4Bの130KDa蛋白質の蚊中腸内でのプロセシングの研究成果は新しい知見であり,評価できる。但し,受容体蛋白質の探索,精製は困難を極めている。また,組換えらん藻に関しては,研究の意図が明確でなく,より基本的な遺伝子の構造と動態,新規殺虫蛋白質の構築等に研究勢力を注ぐことが求められる。

(3)微生物由来害虫防除蛋白質の探索と高生産技術の開発
(信州大学農学部 千 菊夫)   

安定化因子p20のトキシン発現への寄与を明らかにしようとしているが,大量取得,精製に困難を極めている。70Md高分子プラスミドの解析は約20%の遺伝子の配置が指定された段階で,制御機構の解明はこれからである。新規BT菌の探索については,進行状況から中止,あるいは課題4と統合すべきである。

(4)新規な有害双翅目昆虫特異的殺虫蛋白質を産生するBT菌のスクリーニングと遺伝子解析
(近畿大学理工学部 武部 聡)   

新規BT菌のスクリーニングを課題に掲げているのにその進展は極めて遅い。今後,スクリーニングにおける殺虫性の判定に関わる実験系の確立,取得遺伝子が有用遺伝子である証明,論文の公表促進等効率的な進展が確保され,改善が図られるならば,次年度以降の研究継続も可である。
→ 平成12年度の研究成果によっては研究終了