生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2000年度 中間評価結果

高機能性脂質食品素材の開発に関する基盤的研究

(京都大学大学院農学研究科 松野隆一)

評価結果概要

全体評価

脂肪酸を酵素的手法によってて、様々な物質に結合させる技術やエマルジョンの粉末化技術など、工学的な視点からは多くの優れた成果がえられている。現象を定性的でなく量論的に救うことは、各現象を理論的に説明できる。脂質過酸化反応におよぼす本研究の成果は意義深い。本研究は、油脂を構成する単位の一つである脂肪酸のみが研究材料となっている点に問題がある。また、生成物の機能性の検討が遅れている。

中課題別評価

(1)熱力学的障壁を克服した機能性食品素材物質の酵素合成
(岡山大学工学部 中西一弘)

酵素を用いた新規な物質生産技術の開発研究として、価値ある内容を含んでいる。しかし、脂肪酸を利用した研究が中心となっている。これでは不十分で、少なくともモノ、ジ、トリグリセリドのいずれかを対象とすべきである。ペプチドのアシル化、タンパク質のアシル化は大きな成果といえる。しかし、酵素による糖のアシル化物の大量生産が可能になれば有意義であるが、脂質の配糖体化だけでは新規性に欠ける。特別な機能をあらかじめ想定して研究を進める必要がある。

(2)新たな脂質粉末化技術の開発と高機能性食品への応用
(京都大学大学院農学研究科 松野隆一)

食品利用という面から粉末化技術とその理論的解析およびO/WやW/O/Wエマルションの粉末化とその問題点の明確化など、食品工業において重要な課題に取り組んでおり、成果をあげている。粉末化した脂肪酸の酸化の速度論的解析は、意義がある。抗酸化剤を併用して粉末化を行い、酸化安定性を高めたシステムの開発も期待される。

(3)エマルション系、濃厚系、極低水分系における相互作用の分子論
(京都大学食糧科学研究所 森友彦)

多糖類と脂質の相互作用について、多くの多糖類について系統的に検討し、多糖類の種類によって脂質の安定性が大きく異なることを見出したのは興味ある成果である。今後は、安定化の機構解明が待たれる。また、異種タンパク質のコンポジット化および乳化系での味物質の刺激応答に関する基礎的な検討を行い、新たな物性を有する脂質含有食品の創出に繋がる結果を得た。