生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2001年度 中間評価結果

食品成分による脂質代謝の調節に関する研究

(京都大学大学院農学研究科 森山達哉)

評価結果概要

本研究は生活習憤病を予防・防止する成分を食品素材の中に見出し、健廉増進に利用することを目的としたものである。とくに、トリグリセリドやコレステロールなどの中性脂質の代謝を調節するタンパク質を植物とくにダイズに見出し、その作用機構を解明することにより実用化を目指したものである。
本研究によってダイズタンパク質のうち、β-コングリシニンが血清トリグリセリド濃度低下作用等の機能性を有することを明確に示したことは特記すべき研究成果と見なせる。また、β-コングリシニンの摂取によって、消化管でのトリグリセリドの吸収抑制及び肝臓における脂肪酸β-酸化系酵素の発現亢進を認めたことは、今後の機能性発現のメカニズム解明につながる研究成果と評価できる。 β-コングリシニンの機能性発現のメカニズムの解明及びβ-コングリシニンに由来するベプチド類等の未知の有効成分の分離・同定が本研究課題の核心的な部分であることから、今後これらの点について分子生物学的、生化学的解析が進められることにより、詳細な作用機構が明らかにされることが期待される。これによって、医薬ではなく、新しい生理的機能を持った画期的な食品が創製される可能性が強いものと考えられる。
有効成分を高含有するダイズ品種の探索では、4000品種のダイズの中からβ-コングリシニンを高含有する品種の選抜が進められたが、期待した程のものは得られていない。今後の研究推進においては、有用な遺伝資源ダイズ品種の検索を実施するだけでなく、品種間における差異が遺伝的要因によるのかどうかという点を明確にする必要がある。