生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2001年度 中間評価結果

抗病性産業動物の作出に関する分子遺伝学的研究

((独)農業生物資源研究所 三橋 忠由)

評価結果概要

全体評価

本課題では、抗病性関連遺伝子群の構造と機能を解明するとともに、遺伝的抗病性を保有する個体を用いて抗病性関与遺伝子座を明らかにすることを目指し、前期3年間の研究を行った。魚類についてはMHCに関する分子遺伝学的研究、抗病性にかかわるMHCの役割についての研究が進展し始め、国際的に評価できるレベルの成果が得られている。一方、鶏については、研究の歴史が古く、新規に重要な成果を挙げるのは容易ではないことは理解できるが、研究の進捗が遅く、成果が乏しい。課題を整理してテーマを絞るべきである。即ち、ニジマスMHCと抗病性、鶏MHCB19とB21の塩基配列の比較が、この抗病性プロジェクトの今後取り組むべき課題であろう。

中課題別評価

(1)ニジマスMHC遺伝子の多様性及び機能の解析に関する基礎的研究
((独)水産総合研究センター 乙竹 充)

実験の進め方に一貫性があり、着実に目標に向かって成果を挙げている。即ち、ニジマスの古典的MHCの研究はユニークなものであり、MHCの単離と構造解析に関し、塩基配列の決定に至る成果を挙げている。これまでに収集した遺伝子群の構造解析によりニジマスのMHCクラスI遺伝子の多型性が明らかになりつつある。抗病性をIHNウイルスに絞って検討するアプローチも妥当である。

(2)新規MHC関連遺伝子群の構造並びに機能の解明
(藤田保健衛生大学総合医科学研究所 橋本 敬一郎)

新規に単離したMHC遺伝子DS-3の塩基配列を決定し、他のMHC分子とを比較し、高い成果を挙げている。MHC関連遺伝子MR1の局在を同定しており、その発現細胞株を樹立した。今後の発展が期待できる。なお、ニジマスで全てのMHC関連遺伝子をクローニングしタイピングできるようにして、水産研に渡し、抗病性との関連を発展させたらどうか。

(3)ニワトリMHC領域におけるマレック病関連遺伝子の探索とその遺伝探索
(広島大学生物生産学部 山本 義雄)

研究の進捗と成果が乏しい。マレック病抵抗性とMHCとの関連性を強調しているが、研究の方向性の特徴が乏しい。MHCクラスIとクラスII領域の全塩基配列の決定を試みている点は一応評価できる。数年前に発表されたB12遺伝子の配列にもとずいて、B21とB19の遺伝子構造の差を求めることは妥当なアプローチと思えるので、今後の成果を待ちたい。

(4)ニワトリにおける抗病性遺伝子座の解明
((独)農業生物資源研究所 三橋 忠由)

進捗が大幅に遅れており、計画達成の可能性は低い。5系統における白血病レセプター遺伝子型や内在性ALVの存在等々について解析しているが、新しい知見が得られた印象がない。 課題のなかのいずれのテーマも中途半端となっている。この研究では、ウイルス学的基盤が重要であり、テーマはその上に立っているとは思えない。白血病抵抗性についての研究継続の必要性は認められない。本課題は中止とするのが妥当である。
→平成13年度で研究終了