生物系特定産業技術研究支援センター

新技術・新分野創出のための基礎研究推進事業

2001年度 中間評価結果

昆虫細胞成長因子の機能解明と利用に向けた基礎研究

(北海道大学低温科学研究所 早川洋一)

評価結果概要

全体評価

本研究は、昆虫から同定した生理活性ペプチドである昆虫成長因子(GBP)の構造活性相関を明らかにするとともに作用機構の解明を行い、新たな昆虫細胞成長因子研究の基礎を築くことを目指している。これまでの研究成果は優れたものであり、今後も当初計画どおり研究を進めることに支障はないと考えられる。しかし、研究内容が拡散する傾向が認められるので、意識的に目標を絞り込む努力が必要であろう。今後の研究の効率的な展開には、GBPレセプターの単離、同定、機能解析が必須である。これらの結果を踏まえ、また、細胞種特異性を考慮に入れ、昆虫成長因子の動物医薬としての有用性の評価を可能とする方向での研究展開が望まれる。

中課題別評価

(1)昆虫成長因子の作用機構解明と新規成長因子の探索
(北海道大学低温科学研究所 早川洋一)

GBPの活性発現に必要な最小コア構造の確定やGBPレセプター分子の概略構造の決定など興味ある多くの知見が蓄積しつつある。しかし、GBPレセプター単離の部分で若干の遅れがあり、その単離、同定、大量調製ができるかどうかが今後の課題である。その他については部分的に予想を上回る成果を挙げており、後半の研究計画でとくに変更すべきところはない。今後、中課題2との連携で、細胞成長因子の「利用」に向け強固な基礎を固めるための具体的取り組みの強化が望まれる。

(2)ヒト細胞に活性を示す昆虫成長因子の構造改変と新薬開発
(富山医科薬科大学薬学部 河野敬一)

既知成長因子の立体構造解析などのほか、GBPの大量発現系の確立に成功するなど、いくつかの評価すべき成果を挙げている。また、中課題1との連携のなかで、構造活性相関解析から今後の利用に向けて必須の知見を蓄積しつつある。研究期間が残り半分となった時点で注意すべき点は、この中課題の目標ともなっている新薬開発に向けての具体的取り組みを強化することと、そのために必要であるなら細目課題の絞込みを積極的に行うことである。

(3)昆虫成長因子の機能と情報伝達機構の解明
(独立行政法人 農業生物資源研究所 木内 信)

昆虫細胞成長因子の機能と情報伝達機構を明らかにすることが目標となっているが、これまでのところ研究は着実に進んでいると判断される。この課題内容が極めて広範であることから、残りの期間内での取りまとめを考慮し、細目課題間でのエネルギー配分に留意しつつ焦点を一層明確にした研究を進めることが望まれる。その場合、モデル昆虫としてのカイコの有利性を最大限活用する方向に研究を展開するべきである。